- 胃痛(みぞおちの痛み)
- 胃痛を和らげる姿勢
- 胃痛(みぞおちの痛み)について
- 胃痛(みぞおちの痛み)の原因
- 胃痛(みぞおちの痛み)の原因となる疾患
- 胃痛(みぞおちの痛み)の検査
- 胃痛(みぞおちの痛み)の治療
- 胃痛の時、食べない方がいいですか?
- 胃痛は消化器内科の当院へ
胃痛(みぞおちの痛み)
胃痛の感じ方は個人差がありますが、一般的に次のようなお悩みで受診される方が多いです。
以下に当てはまる症状が起きている場合、一度当院までご相談ください。
- 強い腹痛が起きている
- 胃が圧迫されるような痛みを覚える
- 腹部に張り感を覚える
- 胃に灼熱感を覚える
- 胃が重たい
- 急に腹痛が起こるが、すぐに治まる
- 何も食べていない、少量食べただけで満腹感がある
- 安静時あるいは特定の姿勢を取ることで胃の不快感が解消する
- 食後、胃痛を感じる
- 胸の中央部に圧迫感や刺されるような痛みがある
- 呼吸が浅くなると痛みが強くなる など
胃痛を和らげる姿勢
胃痛が起きている場合、次のような姿勢を取ることで緩和することがあります。
前かがみ
前かがみの姿勢を取ることで腹壁の緊張が緩和され、腹痛が軽減されることがあります。脚を前に抱え、腰を軽く曲げる体育座りのようなイメージです。
横向きに寝る
横向きになり、上の脚を曲げて前方に倒す姿勢は、「シムス位」として知られています。この姿勢を取ることで、胃の痛みが軽減されることがあります。
胃もたれや消化不良の改善には、右側を下にして横になることが有効とされています。逆に、左側を下にすると、胸焼けや逆流性食道炎などの症状を抑えられます。
胃痛(みぞおちの痛み)
について
胃などの消化管は脳と深い関係があり、自律神経がその仲介役を担い、消化管機能を管理しています。ストレスなど外部からの刺激を受けると自律神経が乱れ、胃酸の分泌過多や粘液の分泌低下、血流の停滞などが発生し、胃粘膜にダメージが加わりやすくなります。ストレスによって胃痛が起こるのはこの仕組みが影響しています。
胃痛(みぞおちの痛み)
の原因
上腹部の痛みは、ストレスだけでなく、上部消化管(食道・胃・十二指腸)の問題をはじめ、膵臓や胆のうなど、胃の近くに位置する消化器系の異常からも引き起こされることがあります。また、心臓や血管の異常も原因となることがあります。このように原因は様々考えられるため、適切な治療を施すためには、腹部超音波検査や胃カメラ検査、血液検査などを行い、正確に原因を把握する必要があります。なかでも、胃カメラ検査は上部消化管の疾患の確定診断に非常に役立ちます。
胃痛(みぞおちの痛み)
の原因となる疾患
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、強酸性の胃酸などの胃の内容物が食道に逆流し、胃酸からの防御機能を持たない食道粘膜に炎症を引き起こす疾患です。主な症状には、胸焼け、げっぷ、酸っぱいものがこみ上げる呑酸、みぞおちの痛みなどが挙げられます。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、検査を行っても炎症などの器質的異常が見つからないにもかかわらず、胃周辺の痛み、胃もたれ、膨満感、早期膨満感などの症状が続く疾患です。
胃の運動機能や知覚機能に発生するトラブルが原因と言われています。
食道がん
食道は、口から胃へと食べ物を運ぶ管状の臓器で、その長さは25cmほどです。食道がんは、疾患名の通り、食道粘膜に発生するがんです。初期段階では自覚症状が乏しいですが、進行するにつれて、咳や飲み込みにくさ、胃痛、背部痛、持続的な咳、嗄れ声などの症状が起こります。
食道壁は薄く、肺や重要な血管が隣接しているため、がんが周囲に浸潤したり転移したりしやすく、早期発見・早期治療が欠かせません。そのため、定期的に胃カメラ検査を受けることが推奨されます。
特にアルコールの過剰摂取や喫煙は、食道がんのリスクを高める要因となるため、これらの習慣がある方は、定期的に胃カメラ検査を受けましょう。
急性胃炎
胃粘膜に発生する急性の胃炎です。胃痛が急激に発生し、吐き気や嘔吐、発熱などの症状も伴います。主な原因にはストレスや暴飲暴食が挙げられますが、最近では解熱鎮痛剤である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やステロイド薬が原因となるケースが増えています。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
潰瘍とは、皮膚や粘膜の炎症が進行し、その深部にまで傷が及ぶ状態を指します。胃潰瘍は胃の粘膜が炎症によって傷つき、その下の層にまで影響を与えるもので、十二指腸潰瘍も同様に十二指腸の粘膜が傷つき、深層の組織にまでダメージが及びます。
胃潰瘍の場合、食後に胃痛を感じることが多いのに対し、十二指腸潰瘍は食間や食前に胃痛が現れることが一般的です。これに加えて、胸焼けや胃もたれ、膨満感、げっぷ、吐き気などの症状も見られます。潰瘍が進行し血管が障害されると、出血を引き起こし、吐血や黒色便が現れることがあります。また、重度になると漿膜(しょうまく)を突き破って穿孔が生じ、胃の内容物が腹膜に漏れ出して腹膜炎を引き起こすこともあります。
潰瘍の主な原因は、ピロリ菌感染が5割以上を占めていますが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)によるものもあります。治療では、胃酸分泌抑制薬や粘膜修復薬などが使われ、多くの場合、数ヶ月かけて回復します。自己判断で治療を中断すると再発・悪化するリスクがあるため、医師の指示に従って治療を続けましょう。
ピロリ菌が原因であれば、潰瘍の症状が解消した後に除菌治療を行うことで、再発リスクを大幅に抑えられます。一方、薬剤性の場合、休薬やお薬の変更が必要となります。
胃がん
胃がんはかつて日本において最も多く見られるがんであり、発症数・死亡率ともにトップを占めていました。しかし、近年では食生活の欧米化が進み、大腸がんなどの発症が増えた影響で胃がんの順位は下がっています。それでも、年間10万人以上が胃がんを発症している現状は変わっていません。
胃がんは初期段階では自覚症状が乏しいですが、進行するにつれて胃の不快感や胃痛、胸焼け、食欲不振などが現れます。これらの症状は他の上部消化管疾患でも見られるため、適切な診断が求められます。また、がん細胞は非常に壊れやすく、出血を引き起こしやすいため、黒色便が出ることが良くあります。
日本人にとって胃がんは長年にわたり重要な健康課題であり、研究が進むなか、早期発見のための検査・治療法が確立されてきました。早期発見が実現できれば、内視鏡による手術で完治が期待できます。
胃がんの発症には主にピロリ菌感染が関連しており、日本においては原因の9割以上を占めていると言われています。ピロリ菌の感染が判明した場合、除菌治療を受けることで、胃がんの発症・再発リスクを大幅に低減することが可能です。
上記で述べましたが、胃がんは初期段階では自覚症状が乏しいので、定期的に胃カメラ検査を受けましょう。
慢性胃炎 (ピロリ菌感染症)
ピロリ菌は胃の粘膜に定着する際、自らが作り出すアンモニアによって胃酸を中和して生息します。しかし、このアンモニアの毒性や胃粘膜の防御機能の低下により、周囲に慢性的な炎症が引き起こされ、やがて慢性胃炎へと進行します。
慢性胃炎は自覚症状がほとんどないことが多いものの、場合によっては胃の不快感や痛み、吐き気などの症状が起こることがあります。この状態が長く続くと、胃粘膜が萎縮し硬くなる萎縮性胃炎や、粘膜の性質が腸に似たものへと変化する腸上皮化生が生じ、胃がんのリスクが高まる可能性があります。
胆のう炎・胆管炎
胆のうは肝臓の裏側、右脇腹のあたりに位置し、脂肪の消化を助ける胆汁を一時的に蓄える役割を持つ臓器です。胆汁は食事の際に十二指腸へ送り出されますが、その通り道である胆管に結石などの障害が生じると、胆汁の流れが滞り、胆のうに炎症を発生することがあります。
胆のう炎では、右上腹部から背中にかけての痛み、吐き気や嘔吐、発熱などの症状が起こります。治療の基本は、抗生剤による炎症の抑制と、原因となる結石の除去です。しかし、炎症が繰り返される場合や症状が重い場合には、外科手術を行って胆のうを摘出することも検討されます。
胃痛(みぞおちの痛み)の検査
胃痛を引き起こす原因は多岐にわたります。そのため、まずは問診にて症状の内容や程度、きっかけ、既往歴、普段飲まれているお薬などについて詳しくお聞きします。その上で検査を行って原因疾患を特定し、適切な治療方針をご提案します。
以下が胃痛に対して行う主な検査です。
超音波検査 (腹部エコー検査)
超音波検査は、胃カメラでは観察できない肝臓や胆のう、膵臓などの消化器の状態を確認するための検査です。検査時には、対象となる部位の皮膚に専用ジェルを塗布し、その上からプローブ(超音波の発信器)を当てます。音波が臓器に当たって反射する様子を白黒の画像として映し出すことで、異常の有無を調べます。体への負担が少なく、痛みを伴わない安全な検査方法です。
血液検査
血液検査は、腕の静脈から採取した血液を分析し、体の様々な状態を評価する検査です。炎症の有無やその程度、感染の有無、内分泌機能の状態、各臓器の働きなどを確認するために行われます。また、がんの可能性を調べる腫瘍マーカーの測定も可能です。
胃内視鏡検査 (胃カメラ)
胃カメラ検査は、上部消化管(食道・胃・十二指腸)の粘膜を直接観察する検査です。各疾患に特有の病変の有無を確認でき、怪しい病変が見つかった場合は組織を採取して病理検査に回します。また、潰瘍部から出血が認められた場合は止血処置を行えます。観察対象は上部消化管のみですが、他の検査と違って治療や確定診断なども一気に行える点が特徴です。
胃痛(みぞおちの痛み)の治療
原因疾患を特定できたら、食事や運動などの生活習慣の改善、薬物療法など適切な治療を行います。
生活習慣の改善
日々の食事内容や食事のタイミングを見直し、適切な休息や質の良い睡眠、運動の習慣づけなど、生活リズム全体を整えるための指導を行います。これにより、症状改善を図ります。
内服薬
原因疾患に応じて、胃酸分泌抑制薬や胃機能改善薬、粘膜修復薬などを使用します。ストレスなど精神的要因の影響が大きい場合、短期的に精神安定剤や抗うつ薬なども使用することがあります。
漢方薬
漢方薬は特定の疾患ごとに決まった処方を行うのではなく、患者様の体質や体力、症状の特徴に応じて最適な処方を選びます。胃痛に対しては消化器の機能を整え、自然な回復を促す効果が期待できるものを中心に用います。
胃痛の時、
食べない方がいいですか?
強い胃痛があるときは、無理に食事を摂らず、まずは胃を休めることが重要です。なお、脱水を防ぐために、少量ずつこまめに水分を補給するよう心がけましょう。
胃痛のとき、食べないほうがいいもの
- 高脂肪食や硬いものなど消化に時間がかかるもの
- わさびやからし、こしょう、とうがらしなどの香辛料
- 漬物や塩辛など塩分の含有量が多いもの
- チョコレートやようかんなど甘いもの
- 炭酸飲料やカフェイン、柑橘系の飲み物
胃痛のとき、食べるといいもの
- うどんやおかゆなど胃に優しいたべもの
- 蒸し野菜、鶏むね肉、蒸し魚、白ご飯、バナナ、ヨーグルトなど
胃痛は消化器内科の当院へ
胃痛の原因疾患は多岐にわたり、なかには深刻な疾患が原因となっていることもあります。そのため、「そのうち治るだろう」と放置することは危険です。
例えば、胃潰瘍が悪化して穿孔が発生し、命に関わる状態になる恐れもあります。また、胃痛をきっかけに受診し、検査を行った結果、胃がんが発見されることもあります。さらに、みぞおち付近には心臓や主要な血管が位置しているため、胃痛だと思い込んでいた症状が実は心筋梗塞の兆候の場合もあります。
このように、胃の痛みは軽視できない症状の1つです。違和感を覚えたら、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。当院では丁寧に診察を行い、適切な治療を行っていますので、お気軽にご相談ください。