不整脈とは
心臓は、電気的な刺激によって規則正しく収縮と拡張を繰り返し、休むことなく働き続けています。しかし、この電気信号に乱れが生じると、心拍数や鼓動のリズムが乱れ、不整脈が起こります。
不整脈の中には経過観察のみで問題ないものもありますが、重篤な病気に繋がるタイプもあるため、まずは専門医による正確な診断を受けることが大切です。不整脈は自覚がないまま起きていることも多く、健康だと思っていても見つかるケースも少なくありません。違和感を覚えたら早めに当院までご相談ください。
不整脈の種類
脈が遅くなる「徐脈」、反対に脈が速くなる「頻脈」、そして鼓動のリズムが一時的に乱れる「期外収縮」などがあります。
脈が遅い徐脈
徐脈とは、脈拍が1分間に40回以下になる状態を指します。この状態は、心臓を動かす電気信号がうまく作られなかったり、信号が通る経路に異常があってうまく伝わらなかったりすることで発生します。
脈が速い頻脈
頻脈とは、安静時の脈拍が1分間に120回以上になる状態を指します。運動や緊張、興奮などで一時的に脈が速くなるのは正常な反応で、心配には及びません。
原因としては、心臓の電気信号が異常に早く発生したり、伝導に異常があって信号が空回りするケースなどが考えられます。
脈がとぶ・抜けるなど不規則な期外収縮
期外収縮は、不整脈の中でも特に多く見られるタイプです。通常、心臓を動かす電気信号は決まった場所から出ますが、期外収縮では別の場所から異常な電気刺激が発生し、脈が一拍抜けたり、余分に打たれたりすることがあります。
こうしたリズムの乱れが続くと、心筋梗塞や心筋症、弁膜症などのリスクが高まり、重症化すると突然死に至る可能性もあります。
不整脈の症状
不整脈の種類によって現れる症状は異なります。なお、不整脈はまったく症状が現れないことも少なくなく、検査をして初めて見つかるケースも多くあります。
代表的な症状
頻脈
- 頻脈では、動悸や息切れが起こる
- 脈拍が極端に速くなると、めまいや冷や汗、時に意識が消失することもあります。
徐脈
- 身体を動かすのがつらく感じる
- 少し動いただけで息切れする
- ふらつきやめまいが起こる
- 状態が悪化すると、意識を失い失神することもあります。
期外収縮
期外収縮は脈が飛ぶことで、結滞感や動悸、胸の違和感、漠然とした不快感などの症状が出現することがありますが、全く症状を感じないことも多い不整脈です。
不整脈の原因
不整脈は、心臓自体に原因がある場合と、生活習慣や身体の状態による場合があります。心臓に関連する疾患には、冠動脈疾患、弁の異常、心不全、先天性心疾患などがあります。また、加齢やストレス、疲労、睡眠不足、自律神経の乱れなども関係します。
その他、次のような要因も不整脈の引き金となることがあります。
心臓は1日に約10万回拍動しており、こうした様々な要因により電気信号のリズムが乱れることで、不整脈が引き起こされることがあります。
不整脈の診断
安静時12誘導心電図検査
ベッドに横になった状態で手足と胸に電極を取り付け、12の異なる方向から心電図を記録します。
ホルター心電図
通常の心電図では異常が検出されないこともあるため、より詳しく心臓の状態を調べる必要がある場合に行われるのがホルター心電図です。携帯型の心電図装置を装着し、日常生活の中で24時間連続して心電図を記録します。
運動負荷心電図
安静時には現れない不整脈や心臓の異常が、運動によって明らかになることがあります。
この検査では、ランニングマシン(ベルトの上)を歩いたり走ったり、自転車をこいだり、階段の昇り降りをするなどの運動を行いながら、心電図を記録します。
心臓超音波、胸部レントゲン検査
不整脈の原因を詳しく調べるためには、心臓の構造や機能に異常がないかを確認することが大切です。心臓超音波検査では、心臓の収縮力や弁の動き、筋肉の厚み、心房や心室の大きさなどを評価できるため、心筋や弁の病気の有無を調べることができます。
また、胸部レントゲン検査を併用することで、心臓の大きさや肺の状態なども確認でき、不整脈の背景にある心臓疾患を把握するうえで有効な検査です。
冠動脈CT
心筋梗塞などの虚血性心疾患が不整脈の原因として疑われる場合に行う検査です。冠動脈CTが必要と判断した場合、提携先の医療機関をご案内します。
不整脈の治療と予防
不整脈の治療では、まず薬物療法で脈の乱れを抑え、心拍数を安定させることを目指します。抗不整脈薬などが用いられ、症状やタイプに応じて処方されます。
頻脈性不整脈に対してはカーテル手術による根治治療、徐脈性不整脈や心室頻拍・心室細動に対してはペースメーカーや植込み型除細動器などの機器を体内に設置する外科的治療が行われることもあります。
徐脈治療(ペースメーカー治療)
人工ペースメーカーを体内に埋め込み、心拍が遅くなった際に電気刺激を送ってリズムを整える治療が行われます。脈拍が安定することで、健康な方と大差ない日常生活を送ることが可能です。
頻脈治療
頻脈に対する治療の第一選択は、薬物療法です。抗不整脈薬や血栓を防ぐお薬など、不整脈の種類や患者様の状態に応じて、複数のお薬を組み合わせて処方します。
お薬で十分な効果が得られない場合には、高周波カテーテル・アブレーションと呼ばれる治療法を行います。これは、カテーテルという細い管を足の血管から心臓まで挿入し、異常な電気信号を発している部分に高周波の熱エネルギーを加えて焼灼することで、不整脈の発生を抑える方法です。
さらに、他の治療が難しい重症例では、植込み型除細動器(ICD)の装着を検討することもあります。ICDは、危険な頻脈が発生した際に自動的に電気ショックを与え、心拍を正常に戻す装置で、突然死のリスクを大きく下げることができます。
AED(自動体外式除細動器)
AEDは、心室細動で倒れた人に電気ショックを与え、心臓のリズムを正常に戻すための救命装置です。医療知識がなくても扱えるよう設計されており、音声ガイドや図解で誰でも正しく使えるよう工夫されています。AEDで命が救われた事例が報道されたこともあり、現在では多くの施設に設置されています。
また、自治体などではAEDの使い方を学べる講習会を開いていることもあるため、ご自身やご家族に不整脈がある方は、一度参加してみることをお勧めします。
不整脈の危険サインは?
一部の不整脈では、重篤な症状が発生することがあり、迅速な医療対応が求められます。特に心室細動や心室頻拍など心室から発生する不整脈は、心臓のポンプ機能の大幅な低下を招き、全身への血流を妨げるため、非常に危険です。これらは心停止や突然死の原因にもなり得ます。
激しい動悸や強い胸の痛み、呼吸困難、意識の混濁、失神といった症状が現れた場合は注意が必要で、なかでも心室細動は突然の意識喪失を引き起こしやすく、これは非常に危険な事態を示しています。これらの症状は、心臓から十分な血液が送り出されなくなり、脳や重要な臓器への酸素供給が著しく低下している状態を反映しています。
統計的にも、心筋梗塞の既往がある方など、心疾患を抱える人々において、心室性不整脈による突然死は主要な死因の1つとされています。また、心房細動は脳卒中のリスク要因と知られており、こちらも見逃せない不整脈の1つです。
最近の研究では、特定の不整脈が突然死のリスクを大きく高めることが明らかになっており、特に心室細動はただちに治療が必要な状態であることが強調されています。