血便について
血便とは、便に血が混じっている状態を指します。赤色や黒色など目で見て分かるものもあれば、便潜血検査ではじめて確認できる場合もあります。血便は、消化器や直腸、肛門からの出血が原因で起こり、主な原因として胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、大腸ポリープ、大腸がん、痔などが考えられます。
心配いらない血便は?
血便や下血が見られた場合、「大丈夫だろう」と考えるのは危険です。出血がある以上、消化管のどこかで何らかの異常が起きているため、適切な検査と治療が必要です。出血の原因は、大腸がんや胃がんのような重篤な疾患とは限りませんが、原因が判明しないまま放置するのは避けるべきです。
また、便潜血検査で陽性となった場合も同様に、医療機関を受診して詳しい検査を受け、出血の原因を明らかにすることが大切です。
血便は
何日続くとやばいですか?
血便が一時的に治まったとしても、大腸がんなどの悪性疾患を完全に否定することはできません。特に、血便が3日以上にわたって続く場合や、発熱や腹痛などの症状を伴う場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。また、血の量や色が変化している場合も注意が必要です。適切な検査を受けることで、病気の早期発見・早期治療に繋がります。
血便の主な種類
鮮血便
直腸や肛門など、お尻に近い部位からの出血によって生じる血便です。
粘血便
粘り気のある粘液に血が混じった状態の血便を指します。潰瘍性大腸炎などの病気に加え、食生活の乱れや腸内環境の変化が原因となることもあります。
タール便
便全体が黒ずんでいる状態を指します。これは、胃や食道など上部消化管で出血した血液が酸化し、黒っぽく変色するために起こります。
血便で考えられる原因・疾患
多くの方が「血便=痔」だと思っていますが、実際にはそれ以外にも多くの疾患が関与しています。血便は1つの症状であり、その背景には様々な病気の可能性が隠れているため、注意が必要です。特に、大腸がんなどの重大な疾患も原因となることがあるため、血便が見られた場合は放置せず、早めに当院へご相談ください。
血便の原因として、以下のような疾患が考えられます。
感染性腸炎
O-157(病原性大腸菌)やサルモネラ菌などの細菌が含まれた食品を食べることで、腸内に炎症が生じ、その結果血便が出ることがあります。血便に加え、腹痛や下痢、発熱などを伴うケースが多いため、早期の対処が重要です。
痔
いぼ痔(痔核)や切れ痔(裂肛)など、痔によって血便が発生することがあります。痔が原因となる血便は、「トイレットペーパーに血が付着している」「便の表面に少し血が付いている」「排便後に肛門から血が少しずつ垂れてくる」といった特徴が見られます。
胃潰瘍
胃潰瘍は、胃酸などが原因で胃の粘膜が傷つき、欠損する疾患です。胃潰瘍による血便は黒っぽい色をしています。血便のほか、食後にみぞおち付近に痛みを感じたり、吐血が生じたりすることもあります。
十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍は、胃酸などが原因で十二指腸の粘膜が傷つき、欠損する疾患です。胃潰瘍と同じく、血便は黒っぽい色をしています。この病気の特徴的な症状は、夜間や早朝など空腹時に腹部に痛みが生じることです。胃酸の分泌が多い若年層に好発します。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜に慢性的な炎症が発生し、びらんや潰瘍が形成される疾患です。下痢とともに血液を含んだ粘り気のある血便が見られます。症状が悪化すると、腹痛や高熱が発生することもあります。
大腸ポリープ
大腸ポリープは、大腸の内壁が隆起してできたイボ状の腫瘍です。初期段階では特に症状はなく、進行して大きくなることで腸内の内容物がポリープを刺激し、出血を引き起こすことで、血便が現れることがあります。また、ポリープの中にはがんに変わる可能性があるものも存在し、早期発見のためにも定期的に大腸カメラ検査を受けることをお勧めします。
大腸がん
大腸がんは初期では自覚症状が乏しいですが、進行につれて血便や便が細くなる、さらには便秘・下痢などの便通異常が見られるようになります。大腸がんは、前がん病変である大腸ポリープを早期に切除することで予防が可能です。早期発見のためにも、定期的に大腸カメラ検査を受けましょう。
血便を放置すると危険
血便をそのままにしておくことの最も大きなリスクは、直腸がんや大腸がんなどの重大な病気を見逃すことです。よくあるのが「切れ痔だろう」と自己判断して放置してしまい、実際には大腸がんが原因だったというケースです。なかには、気づいた時には既に末期の大腸がんに進行していたということもあります。
大腸がんが進行した場合、血便をはじめとする便通異常が起こることがあります。こうした異常な兆候を見逃さず、早期に適切な検査を受けるためにも、当院での診察をお勧めします。
血便の検査方法
便潜血検査
便潜血検査では、肉眼で確認できない微量の血液が便に含まれているかどうかを調べることができます。この検査は、特に大腸がんの早期発見に役立ちます。しかし、検査結果が陰性であっても、大腸がんやその他の病変が完全に否定されたわけではありません。検査ではあくまで便の中に血が含まれていないことが確認されただけに過ぎず、大腸ポリープや早期の大腸がんなどが見逃される可能性もあります。
大腸カメラ検査
大腸カメラ検査は、内視鏡スコープを肛門から挿入し、大腸全体を詳しく観察する検査です。血便が出た場合、大腸に何らかの問題が起きている可能性があるため、この検査を行います。
血便が確認された場合、患者様のご希望を踏まえつつ、通常は「S状結腸内視鏡」を実施することが一般的です。血便の原因となる疾患には、直腸がんや大腸がんなど、深刻な病気が含まれるため、なるべく早期に検査を受けることを推奨しています。
胃カメラ検査
胃カメラ検査は、鼻あるいは口から内視鏡スコープを挿入し、上部消化管(食道・胃・十二指腸)の粘膜を詳しく観察する検査です。黒色便が確認され、胃・十二指腸などからの出血の可能性が考えられる場合に実施します。
血便の治療
血便の原因は痔から大腸がんに至るまで多岐にわたるため、まずは問診を行い、付随症状の有無、既往歴や現在飲まれているお薬、最近の食事内容などについてお聞きします。その後、必要に応じて大腸カメラ検査などを実施し、原因に応じた適切な治療を行います。